Diario
2004年4月3日
ブルーノートから連絡が来た。
今年の夏も、日本で公演ができるということだった。日程はもう決まっていて、9月4日から、福岡、大阪、名古屋 の3箇所で行うとのことだった。
いつもは、1月の終わり頃には、出演が決まっていたのだが、今回は、遅かったので、少し心配していたが、最終的に出演が決定されて、ほっとした。
もう日にちが決まっているので、早速メンバーを調整しないといけなかった。
私の中で、いくつかのアイデアがあった。今年に入ってすぐ考えたことなのだが、もし、今年もブルーノートで公演できるのなら、是非してみたいというものだった。
それは、これまでのメンバーをほとんどすべて、変えてしまおうという事。
今までは、マイカ舞踊団の中のメンバー、もしくは、昔その舞踊団に入っていて、今は違う舞踊団で活躍している古くからの友人などと一緒に仕事をすることがほとんどだった。
単発で仕事をしたときも、紹介によるもので、どこかでつながっていたりしたから、ときどき緊張感に欠けているときもあったと思う。
それは精神的にリラックスして仕事ができ、守られている感じがして居心地がよいことなのだが、技術的に向上していこうと思うなら、いろんな人と違ったスタイルを吸収したり、違った人間関係のサークルで仕事をしていく必要が、私には必要なのではないか頃感じていた。
私は、以前から一緒に仕事をしてみたいと思っていた踊り手がいた。
彼の公演はよく見に行っていた。力強くて、なんといっても、スター性のある踊り手だった。
私が一番尊敬していて、憧れていて、神様のように崇めている踊り手は、マリオ マヤ。
その踊り手は彼の舞踊団に所属をしていたことがあり、今でも彼と時々仕事をしたりしている踊り手でマリオのテクニカの要素を受け継いでいるところがあったので、目を引いていた人物であった。
コルドバの恒例のコンクールで賞をもらったこともあるすばらしい踊り手だった。
彼の連絡先は、友人に頼んで手に入れていたので、ただダイヤルを回して、彼に頼めばいいだけであったが、なかなか勇気を出して電話をすることができないでいた。
彼にしてみれば、あまりにも突然の電話だ。それも、まったくどこの誰だか知らない人からの電話であるわけだから、慎重に的確に用件を話さないと、仕事を断られてしまう可能性があると思うと、なかなか電話をかけられないでいた。
ある日の夜、稽古から帰ってくる途中、道を歩きながら、彼に話をする内容を順序良く話せるように考えていた。そして、何となく整理がつき、今夜彼に電話をしようと決心した。それからは、急ぎ足で家に帰った。
何だか気持ちも晴れて、嬉しい気分だった。ソファに座って、携帯電話を手にすると友達からもらっていた、紙切れにかかれた彼の電話番号を見た。
彼が、私にokをいうような予感がした。私の気持ちは、すでに彼と一緒に仕事をすることになったら、どんな感じのショーになるだろうと想像しはじめて、何だかうきうきしていた。
私は、自分に冷静さを要求し、深呼吸してから彼に電話をした。電話口で聞こえる彼の声は、とても明るい声だったが、何だかとても忙しそうに感じられた。
周りが騒がしいのか、電波の悪いところにいるのか、あまりよく彼の声が聞こえなかった。
「悪いタイミングにかけたみたいね。」
「うん。そうだね。あ、でもちょっと待ってくれるかい?」
彼は、静かな場所に移動するようであった。アンダルシアなまりが強い話し方だった。
「それで、君はなんていう名前といったっけ?」
今度はよく聞こえたが、時々トラックや、バスの発車する音で、長くははなせそうになかった。
「ナビラ。私たち一度もあったことがないの。でも、あなたに聞きたいことがあって、友達にあなたの電話番号を教えてもらったのよ。あなたの都合と条件が会うのなら、ある仕事をいっしょにしてほしいのだけれど、、、。一度、あなたに直接会って話をすることできるかしら?」
「ああ、いいよ。明日はどうだい?午前中なら稽古場にいるけれど。」
「いいわ。」
彼から、稽古場の住所を聞いた。わたしたちは、翌日会うことになった。
彼からokか、そうでないかの返事をもらうのが、また一日伸びてしまった。せっかく話す内容も決めていたのに。
でも、ま、いいや。
電話からの話し方だと、気さくで話しやすそうな感じだった。
実際会って話をするほうが、リラックスしていろいろ話せるかもしれない。
それに、彼は私がどういう人物なのか、実際会って話をするまでは、返事もしてこないだろうから。
私は、台所でバルガスを飲みながら、夕食を準備することにした。
もうすでに22時をまわっていた。のどが凄く渇いていたのか、バルガスを一気に飲み干してしまった。

